さむしんぐ〜何かしら〜

映画とテレビと本と旅と日々のいろいろをつらつらと述べます。写真も撮るよ。

「バンドやってて生活できないなんて意味ないじゃん!」を読んで

 

皆さんは「どついたるねん」というバンドをご存知でしょうか

どついたるねん (バンド) - Wikipedia

 

普通歌を作るという過程を行う時に、自分が思ったことを膨らませて、削って、清書して形にすると思う。歌ってそういうもんだろって思っていた。

しかし彼らの歌う歌は本当に心の中から溢れ出る言葉をそのまま放出してる。

清書なんて一切しない。

彼らが気に入ったフレーズや音を大事にして、そこの中に本当の人間の心理なんかがむき出しで伝わってくる。「俺たちは好きなことをやってる。見たい人は見ればいい」という信念を感じて、人に媚びない姿が本当にカッコいい、一切かっこつけない様がカッコいいのだ。全然売れていないのに自信があって堂々としている。人が楽しんでるのを見てると自分も幸せになるそんな感覚に近い。

 

LONG HOT SUMMERという曲に「りんごジュースうめぇ」っていう歌詞があり、その後「そうでもしねぇと愚痴っぽくなる 暗くなる暗くなる ヤバイよヤバイよ 」と続く。本当に心からの叫びだなと改めて思う。りんごジュース飲んでうめえって思うし、暗くなるとヤバイいと思う。それが人間だしソウルだ。心を全裸にさせて歩かせているような歌詞。

 

「生きていれば」という歌がある。

ひたすら生きていればいいことがあるよと伝えている歌だ。それしか伝えてない。けれどもエネルギッシュで、本当に生きていればいいことあるんじゃないか?と思わせてくれる。

成功者の立場から「生きていればいいことあるよ」と諭すのではなく、歌っている本人たちが「生きていればいいことある」と自ら歌い続け、信じ続ける。そうでもしないとやっていけないそんな状態で歌う「生きていればいいことある」というフレーズは前者とは大きく違い、とても生命力を感じる歌である。ぜひ皆さんも聞いて見てほしい。


どついたるねん - 生きてれば @ ユニバースタジオジャパン

 

さて本題だ。この本はそんなどついたるねんが日本列島47箇所を一筆書きでライブするライブツアーについて、メンバーがリレー形式で書き、同時にそのツアーでの収支を事細かに記載しており、バンドの実態を知ることができる一冊である。

 

 

 

「音楽しかしなくていい環境」に置かれた彼らが何を考え、どのような心境の変化が生まれたか、何を得たかを記載している。

ドラムの浜やボーカルのワトソンは、バンドメンバーとは「友達」という関係ではやっていけないと作中に語っていた。バンドではただ単に楽しく演奏するだけが仕事でなく、他の諸々の作業はある程度ドライな関係じゃないと余計な苛立ちを感じてしまう。音楽>友達 と認識し、割り切って活動しなければ変な迷いが生まれると語っていました。ともに生活をする時間が長い「バンド」だからこそ導かれた答えだと思い、自分から見たらただの仲良しバンドもそういった一面も持っているのだと知り、驚きました。

 

また、ワトソンが「アダルトビデオに出ようと思って出ているのではなくてそういうことしかできない」「目的がないから、お金が欲しくて援助交際する女の子よりタチが悪い」と述べていて、自身の目的ではなく乗っかって何か行動を起こすことは、「どついたるねんAV出るなんてトンがってる!」「面白いことをどんどんやってて凄い!」と周りに思われてプラスに働いていたとしても、そこに目的がなかったらタチのわるいと断言している姿に感心して、そこにワトソンの攻めの姿勢を見た。その後彼がバンドでの目的を見つけたと語り、それは「車が欲しい」だった。あまりにも平凡で社会人の金を稼ぐ目的のような回答に、バンドマンというよりも人間らしさを感じた。

 

またワトソンの一節で「自分のやっていることがすぐに想像できたり、ちゃんと言えたりするのはつまらない」とある。この一節に酷く共感した。よく人やSNSを見ていて何考えているのか言葉を交わさずともすぐにわかっちゃう人には全く面白みを感じない。私はつまらない人間にならないために日々思考して、行動を起こしていかなければいけないと思い、まず思考を働かせるためにもこのブログを始めた。

 

なんか人間としても面白い彼らの中身が少し垣間見えるこの一冊是非読んで見てください。バンドのファンでなくても十分に楽しめる内容でした。